歴史の順に微積分を学ぶと?

皆さんは受験勉強でお忙しいことと思います。でも,ときには,誰がどうやって数学や科学を作ってきたんだろう。と想像してみてください。歴史は大人になってから見直すとどんどん面白くなってきますよ。

微分と積分はどっちが先に発見されたでしょうか

証明を伴う数学は古代ギリシャ人の発明であるといわれています。アルキメデスは定積分を発明したといっても過言でないといわれています。一方,微分はニュートンやライプニッツが発明したといってもいいと思います。よって,

積分が先である

といえるでしょう。そこで,log xの微分が1/xになると学ぶよりも,1/xの積分がlog xになることを学ぶ方が自然なんだと大石教授は考えています。1/xの積分がlog xになることを発見する歴史は結構大変で面白いんですよ。そこで,大筋歴史的な順で微積分を学習していくとどうなるんだろうと大石教授は考えました。その結果,

「微積分とモデリングの数理」(2000) 朝倉書店

という本を書きました。歴史的な順にしたがって微積分を学べるようになっています。

歴史を知ると数学が見えてくる

この本の中に出てくるちょっと意外と思われることを列挙してみましょう。

  1. デカルトが数学の中で果たした役割がよくわかるようになる。デカルトは哲学者でしたが,方法序説の付録は座標系のアイディアが入っている大変重要な数学書です。ギリシャ数学は幾何学でした。それで成功する部分は成功したのですが,最後にはいきずまってしまいました。これを打破したのが,座標という考え方です。これによって幾何学の問題を代数的に処理できるようになりました。
  2. ギリシャ数学が滅びた後,多くの本とともに数学は中近東に引き取られました。アルゴリズムというような言葉はそこで数学が発展した証拠です。ルネッサンスで数学がヨーロッパに戻ってきました。このころ活版印刷が始まり,アルキメデスやユークリッドの著作のラテン語訳が印刷されて広く読まれました。この間,2000年位ヨーロッパでは数学の進展はほぼありませんでした。
  3. ケプラーは数学者でもあったんですよ。ヒルベルトの第18問題はケプラーが予測したある問題の解が正しいかという問いです。これは約300年後の現代になってようやく解決しました。ケプラーの予想が正しいことが証明されました。これについての記事も本ホームページにあります。なぜなら,その証明は計算機を利用して実行されたからです。

    [ホームページでの記述] ヒルベルトの第18問題の一つが次の問題である。これが精度保証付き数値計算で解決した。

    Thomas C. Hales:``Cannonballs and Honeycombs'', Notices of the AMS, Vol. 47, No.4 (2000/4) pp.440-449 には立方体に球を充填する際に,どのような方法が最も多く球を充填できるかという問題に対する,ケプラーの予想が正しいことの計算機援用証明が示されている。ケプラーは天体物理の学者であると同時に微積分などにも多くの貢献をした優れた数学者であったが,300年以上証明がつけられていなかったケプラー予想の証明が精度保証付き数値計算によって,つい最近解かれた。充填問題は情報理論でも応用のある基本問題である。

  4. ニュートンは逆2乗則に従う惑星の軌道が楕円になることを証明したがその証明はまるでユークリッド原論の証明であるような古代ギリシャ数学的なものであった。すなわち,微分方程式を使うのではなく幾何学を使っている。皆さんはニュートンが用いた次の命題を証明できますか。

    <問題>


    座標平面上に、原点Oを中心とする楕円がある。 この楕円上に点Pを取り、点Pにおける接線を考える.また、直線OPと楕円との交点のうち、点Pではない方を点Gとする。また、楕円上に点Pとは無関係な点Xを取り、Xを通って接線に平行な直線をLとし、LとOPとの交点をVとする。このとき(PV・GV)/(XV^2)がXのとり方によらず一定となることを証明せよ. (答えは講義のページの中にあります)

これらの内容を含む歴史の不思議を味わいながら微積分を学ぶと,数学が見えてきます。

Webの上の数学の歴史博物館への招待

最後に,外国のものになりますが,とてもすてきな数学の歴史博物館にご招待します。

(1) 数学の歴史において重要な仕事をした数学者のプロフィール

(2) ギリシャ数学の博物館。古代ギリシャの科学者が書いた著作のラテン語訳の表紙などを見ることができる。

(3) ライプニッツは科学だけに限らず幅広い活躍をした。

(4) ニュートンの解析学の発展への貢献。

(5) 惑星の運動や重力の研究の科学史。

(6) 微積分学には色々な定数が登場する。これらも含め、数学的に重要な定数に関するホームページ。

講義の予習復習にはホームページが利用されている

大石教授を含め教授のホームページには講義の予習復習をするための情報が提供されています。大石教授の昨年度の講義科目

「情報系の物理学」(情報学科2年生の)

講義のページを覗いていってみてください。学生のレポートがとても力作揃いなのがわかりますよ。

では,なにかありましたらメールを大石教授に送ってみてください。教授はすぐにお返事しますといっていました。大石教授へのメールは

ココ

をクリックすると出せます。


このページのURIはhttp://www.oishi.info.waseda.ac.jp/~oishi/intro/intro-2.htm

最終更新 2001/5/19

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