仲沢 由香里
出題日 2000.12.6
提出期限 2001.1.10
提出日 2001.1.10
量子コンピュータによる計算を適当な例をもとに説明せよ。
2変数関数を計算する量子コンピュータを考える。
論理関数
すなわち
を計算する量子コンピュータは状態空間上のユニタリ作用素
で与えられ
が成り立つ。
この命題について、考えてみることにする。
量子コンピュータの定義より、Uはユニタリ作用素でなければならない。つまり、
を満たさなければならない。
よって、条件を満たしていることがわかる。
授業でやったNOTの例より、であるので、
となる。よって、上の命題は成り立つことがわかる。
次に計算結果を得るための観測について考えてみる。
エルミート作用素で表される観測量を使う。
の固有値と固有ベクトルについて考える。
を考えると、
からわかるように、その固有値はである。
に対応する固有ベクトルは
ただし、
すなわち、成分で書いて、
なる方程式を解くと、となる。したがって、固有ベクトルのノルムが1になるように規格化して
となる。同様にに対応する固有ベクトルは
となる。よって、の固有ベクトルはそれぞれ固有値0,1に対応している。
同様にして、Iの固有ベクトルはそれぞれ固有値1に対応している。
ここで、A,BをC2上の作用素とする。Aの固有値とそれに対応する固有ベクトルをそれぞれとし、Bの固有値とそれに対応する固有ベクトルをそれぞれとする。
が成り立つことから、の固有値とそれに対応する固有ベクトルはそれぞれ
で与えられる。
よって、A1の固有ベクトルは固有値0に対応し、
A1の固有ベクトルは固有値1に対応することがわかる。
入力がのとき、出力は
であるので、観測の規約より、確率 で0が観測される。
入力がのとき、出力は
であるので、観測の規約より、確率 で1が観測される。すなわち、
入力がのとき、観測値0が確率1で得られ、
入力がのとき、観測値1が確率1で得られる。
したがって、
観測値が0ならば、計算結果はであり、
観測値が1ならば、計算結果はである。
こうやって、観測値から計算結果を確率1で知ることができる。
次にfの第2成分を考える。
今度はエルミート作用素で表される観測量を使う。A1のときと同様に考えると、A2の固有ベクトル,は固有値0に対応し、A2の固有ベクトル,は固有値1に対応している。
入力がのとき、出力は
であるので、観測の規約より、確率 で観測値1が得られる。
入力がのとき、出力は
であるので、観測の規約より、確率 で観測値0が得られる。すなわち、
入力がのとき、観測値1が確率1で得られ、
入力がのとき、観測値0が確率1で得られる。
したがって、
観測値が0ならば、計算結果はであり、
観測値が1ならば、計算結果はである。
こうやって、観測値から計算結果を確率1で知ることができる。
よって、ユニタリ作用素Uによる状態推移ののちに、観測量A1とA2を引き続き観測することによって、論理関数の2つの成分を得ることができ、量子コンピュータによってfを計算できることがわかった。
ユニタリ作用素のことを量子コンピュータというところが面白いと思う。観測という概念も難しいがなかなか興味深いと思った。もう少し、量子コンピュータについて勉強してみたいと思う。
上坂吉則著 「量子コンピュータの基礎数理」